ノイズに強い同軸ケーブルを自作する
LANケーブル同様に埋め込み配線を実現したいものとして、テレビアンテナ線(同軸ケーブル)があります。こちらもLANケーブル同様にあらかじめ端子(F型接栓)がついているものとケーブルのみのものが売られていますが、埋め込み配線を実現するならば半ば当然のごとく先にケーブルを配線してから端子付けという手順になります。
ここでは、同軸ケーブルを配線するための必須作業であるF型接栓を取り付ける手順、同軸ケーブルを加工する手順を詳しくご紹介したいと思います。
使用する材料・工具
材料
- 同軸ケーブル「S-5C-FB」
- 広く一般的に使われているテレビアンテナ用ケーブルです。内部のシールドがアルミ箔とアルミ線の二重シールドになっています。数字が大きいほど芯線が太くなり、より高性能になりますが外形も太くなるので取り廻ししにくくなります。写真では被覆がグレーですがアイボリーやブラックもあります。
- F型接栓
- こちらも広く一般的に使われている同軸ケーブル用端子です。アンテナ端子にねじ込むことで、端子からケーブルが外れるのを防ぎます。同軸ケーブルの太さに応じた物でないと使用することができませんので、今回は「5C」用の「F-5」というものを使います。
- 熱収縮チューブ「スミチューブ」
- その名の通り熱を加えることで収縮するチューブです。スミチューブとは住友電工が製造している商品名ですが、これ以外にもたくさんのメーカーから同様の製品が売られているので、特にスミチューブにこだわる事はありません。使い方は作成手順の中でご紹介します。
工具
- 電工ペンチ
- 電工ペンチという名前がついていますが、いわゆるフツーのペンチです。ケーブルの切断や皮むき、金具のカシメなど多用途に使うことができる工具です。
- カッター
- こちらもフツーのカッター、刃を折って使う「オルファカッター」です。切れ味の良いものを準備しましょう。
では、早速F型接栓を同軸ケーブルに取り付けてみます。
作成手順
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外側の外皮(シース)をむく長さを確認します。F型接栓の細くなっている部分は外皮の内側に入り込むようになります。なので太い部分と同じ長さの外皮をむけばOKです。 F型接栓をあてて大体のところに爪を立てておきます。 |
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爪を立てたところにカッターで切込みを入れて、外皮だけをカットします。 外皮の下にはアルミシールドがあるので、キズつけないように丁寧に作業します。 |
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LANケーブルの外皮をむくときと同じ要領で、切れ込みを入れて切り口を広げるようにケーブルを曲げると中のシールドをキズつけずにすみます。 |
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全周が切れたら引き抜きます。結構な力が必要ですが、焦らずゆっくり、丁寧な作業を心がけます。 |
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外皮がむけました。 アルミシールドのメッシュが見えます。 |
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メッシュを指で起こして反対側に折り曲げます。 |
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こんなかんじです。 |
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ここで熱収縮チューブの登場です。サイズはφ8。折り曲げたアルミメッシュを隠して見た目を良くするために上からかぶせます。 |
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こんなかんじでメッシュがバラつくのをガードします。なんとなく見た目がいいでしょ?自分はエラくお気に入りです。 熱収縮チューブなのでライターなどで熱することでチューブが縮んでしっかりと固定されます。ただ、ここで使用したものはサイズがぴったりで収縮させる必要がなかったりします・・・ |
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続いて芯線を覆っているセパレータをカットします。要領は外皮をむくときと同じです。 F型接栓をあててカットする位置に爪を立てます。 |
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同じようにカッターで切込みを入れます。 芯線にキズをつけないようにゆっくりと慎重に。 |
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ある程度切込みを入れたら、セパレータをねじって分離させます。こうすることで芯線にキズがつくのを防ぎます。 |
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こんなかんじ。ここまで来ればそのまま抜けます。 |
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芯線が出てきました。キズがついていないか確認しましょう。 これでカッターを使った皮むき作業は終了です。 |
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ここからはF型接栓を取り付ける作業になります。 まず、カシメ用のリングをケーブルに通します。 |
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接栓本体を差し込みます。 接栓の細くなっている部分にセパレータを入れて、細くなっている部分が全部ケーブルの中に入るまで押し込みます。ここは結構な力が必要です。 |
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差し込み完了です。 芯線が接栓の先から出ているのが見えます。 |
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通しておいたカシメ用リングをF型接栓の根元に寄せます。 |
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ペンチを使ってリングをカシメます。このリングは単純に丸い形なので、リングを楕円形にしてケーブルを片方に寄せつつ少しずつカシメていきます。 リングにはペンチでつまむ部分が最初から用意されているものがあり、そういったものはカシメ作業がしやすいです。 |
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最後に芯線を適当な長さに切り落とします。 電工ペンチで切る場合は、ペンチの側面をぴったりあてて切ればちょうどいい長さになります。 |
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完成です。 芯線が接栓から少し出ている状態ですが、このくらいが適当だと思います。熱収縮チューブでアルミシールドをカバーしているのでキレイな仕上がりです。 |
F型接栓は一般的なF型プラグ(ドライバーとペンチで固定するタイプの端子)よりもシールド性が高く、芯線を直接アンテナ端子に接続できるのでオススメです。もしもテレビ映像にノイズが入るようなら接栓を交換すると改善されるかもしれません。
同軸ケーブルはどの建物にも配線されているので、分配器の端子に空きがあったり、より多分配のものに交換するなどすれば新たな場所へ配線することができます。そのような時に同軸ケーブルの端子付け作業は必須になりますので、LANケーブルの配線と同時に配線する計画を立ててみてはいかがでしょうか。もちろん、配線してから端子付け、が基本です!
F型接栓はメーカーによってカシメ用リングの形状が違う
F型接栓の取り付けはどのメーカーのものを使っても、基本的には上でご紹介した手順で取り付けることができます。(防水タイプやカシメリング一体型など、特殊なものは取り付け方法がそれぞれ違います。)
ただ、カシメ用リングの形状が少しずつ違うのでカシメ方が多少違ってきますが、このページで使用したカシメ用リングのように単純な円形ではなく、涙形やチューリップ形といったものは出っ張ったところをペンチで摘んでつぶすだけなので使いやすいです。
上の画像では一番左のタイプが使いやすいです。アルミ製で柔らかく、しかしカシメた後はしっかりと固定してくれます。涙形でつまみやすく、一発でカシメられます。
S-5C-FB 10m
S-5C-FB 20m
S-5C-FB 100m
ノーマル仕様
金メッキ仕様
ノーマル仕様
金メッキ仕様
5C用カシメリング
必要ではないがキレイな仕上がりになる”熱収縮チューブ”
熱収縮チューブの目的は「耐熱」「電気的絶縁」「防水」「防食」が主なところですが、ここでの使い方としてはそのどれにも合ってはいません。が、仕上がりがとてもキレイになるので私は好んで使っています。以前はビニールテープを巻いて余ったメッシュシールドをまとめていましたが、ビニールテープは時間が経過するとベタベタとしてきてイマイチ。高価なものではないのでたくさん用意しておくのも良いかと思います。
いろいろな太さのものが用意されている熱収縮チューブ、本来の目的以外にもさまざまなケースで使用することができます。あなたのアイデア次第で見た目も使い勝手も良くなるので、何かの作業をしているときにふと用途を思いつくかもしれません。こういうものがあるんだということ頭に入れておけば必ず役に立つ時が来るはずです。
リンク:住友電工「スミチューブ」
「熱収縮チューブ」で検索
ケーブルの行き先を表示するためのものなど、電気的絶縁を目的としない熱収縮チューブもある
文房具用品のキングジムが販売しているラベルライター「テプラ」には熱収縮チューブのカートリッジが販売されています。これを使えばメッシュシールドをまとめるのとケーブルの行き先表示が同時に実現できるので好都合です。さらに仕上がりのランクが上がるのでとてもいいと思います。
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テプラテープ「熱収縮チューブ」で行き先表示を印刷しました。 |
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同軸ケーブルに通します。 ここでは既にF型接栓の加工が終わったものに反対側から通しています。上でご紹介した黒い無地の熱収縮チューブの上にセットしました。 F型接栓の上からはチューブの内径が狭く通せないので、実際は接栓を取り付ける前に熱収縮チューブを通す必要があります。 |
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ライターであぶってチューブを収縮させます。 テプラテープの箱には「工業用ドライヤーで」って書いてありますが、そんなの無いのでライターです。すすが付かないように炎から少し離してあぶるのがコツです。 |
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行き先表示の熱収縮チューブセット完了です。 チューブの厚みが薄いのでメッシュシールドの上から直にカバーをすると、シールドのデコボコがチューブの表面に浮き出てしまいそうです。シールドのカバーは厚手の熱収縮チューブを使い、テプラの熱収縮チューブは行き先表示だけを目的にしたほうがキレイかもしれません。 |
普段、ケーブルは見えないところにあるわけだから、ほとんど自己満足の世界です。まあ同軸ケーブルにここまで手間暇を掛けるのもどうかと思いますが、LANケーブルに対してはトラブル時に役立つでしょう。あとのメンテナンス性を考えたら手間を掛けるのもアリだと思いますよ。d(^^)
熱収縮チューブ5mm
熱収縮チューブ11mm