従来のCat5eやCat6で2.5Gや5Gのリンクスピードを実現
LANケーブルのカテゴリーは対応する帯域幅によって通信スピードが決められています。Cat5eケーブルの帯域規格は公称値1Gbpsが上限なのですが、配線されているケーブルの長さが短い方がより速いスピードで通信できます。そしてCat5ケーブルでも1Gbps出ることがあるように、まずは距離が短いということが第一条件になります。
これまで有線LANではカテゴリー5eとカテゴリー6では1000Base-T(1Gbps)での接続が最大でしたが、2016年に「IEEE 802.3bz」という仕様が承認されました。「マルチギガビットLAN」というものらしいのですが、10GBase-Tの規格を基本にクロックが
- 1/2の「5GBase-T」(カテゴリー6)
- 1/4の「2.5GBase-T」(カテゴリー5e)
という値になり、従来のケーブルをそのまま流用して高速化できる技術となるそうです。凄いですねぇ、ちょっと期待しちゃいますねぇ。
無線LAN(Wi-Fi)では理論値で既に1Gbpsを超えるスピードを実現する規格が登場していますし、光回線についても「NURO光」の2Gや「auひかり」の5Gなどオーバー1Gの接続サービスが普及し始めています。そう考えると有線LANの1Gというのは遅くはないけど言うほど速くもないっていう状態になってきているのかもしれません。
さて、その「IEEE 802.3bz」という規格ですが現時点で
- スイッチングHUB
- デスクトップ向けLANアダプタ(PCI-E)
- ノートPC向けUSB対応LANアダプタ
などが家庭用として販売されています。そして価格についても従来品と比べるとかなり高価ではありますが、2.5Gに関しては手の届くところまで下がってきています。うーん、家庭内では今のところ必要ではないけど使ってみたい、どのくらいスピードが出るのか気になるところですねぇ。
実際に使用されている方にお聞きしました
以前「出張LAN工事」にて配管工事をさせていただきました東京都葛飾区在住の「Sさま」が、デスクトップPCとホームゲートウェイ間をHUBを介して2.5G接続しているとのこと。実際にどれくらいスピードが出ているのか、スピードテスト結果を送っていただきました。
「Sさま」邸の現在の環境
建物形態 | 一戸建て |
ネット接続メディア | 光ファイバー |
プロバイダ | J:COM光 5Gコース |
ホームゲートウェイ | NEC AtermBL1000HW |
戸建て内での接続イメージ
- 1F浴室天井裏に光ファイバーを導入しホームゲートウェイに接続
- ホームゲートウェイの10Gポートと2.5G対応HUB Planex「FX2G-05EM」をCat6LANケーブルにて接続
- CD管を介し2F居室にあるデスクトップPCにCat6LANケーブルにて接続
- デスクトップPCにはPlanex「GPE-2500T」を増設
Sさま邸では新居にお引っ越しされた後、以下のような経緯を辿っておられます。
- 2021/08/24 入居時 J:COM同軸ケーブル導入(1G)
- 2021/09/13 auひかり5Gに変更(Wi-Fi接続)
- 2021/10/03 配管工事を経てauひかり5G有線LAN接続(2.5G)に切り替え
スピードテスト結果
上記の日付において以下4サイトにて計測。
fast.com | https://fast.com/ja/ |
bspeedtest | https://www.bspeedtest.jp/ |
BNR speedtest | https://www.musen-lan.com/speed/ |
speedtest.net | https://www.speedtest.net/ja |
fast.com https://fast.com/ja/
bspeedtest https://www.bspeedtest.jp/
BNR speedtest https://www.musen-lan.com/speed/
speedtest.net https://www.speedtest.net/ja
結果をまとめると以下の通り(下り/上り 単位:bps)
2021/08/24 JCOM同軸ケーブル(1G) |
2021/09/13 auひかり5G(Wi-Fi接続) |
2021/10/04 auひかり5G(2.5G有線LAN) |
|
---|---|---|---|
fast.com | 200M / 93M | 350M / 580M | 990M / 1.6G |
bspeedtest | 581.79M / 91.21M | 594.66M / 530.22M | 2089.76M / 2337.47M |
BNR speedtest | 259.58M / -M | 517.41M/ -M | 675.31M / -M |
speedtest.net | 624.11M / 90.17M | 351.95M / 572.25M | 2293.87M / 2366.21M |
※キャプチャ画像は2.5G接続のみ表示しています。
有線LANの安定感と圧巻の接続スピードに驚かされる結果となる
予想通り2.5G接続の有線LANは驚異的なスピードが出ています。一般住宅レベルでは見たことのない数字ですね。このスピードが必要かどうかはともかく、手の届くところまで来た感じが素晴らしい。au5Gサービスのポテンシャルを余すことなく使えている優越感があります。そしてなんと言っても既存のCat5eやCat6LANケーブルがそのまま使える、ケーブルの入れ替えが不要というところが導入の際のハードルをとても低くしてくれています。
Sさまはテレワークでお仕事をされているとのことですが、2.5Gを導入してからWeb会議などは全く途切れなくなったそうです。これだけのスピードが出ていればそうでしょうね。ネットゲームなどにも必須になってくるかもしれません。
導入には2.5G対応LANアダプタとスイッチングHUBがマスト
メーカー製PCなどにおいて2022年1月の時点で有線LANポートが2.5G対応の製品を確認することができませんでしたので、現状ではPCI-EかUSB接続のLANアダプタ追加が必須になります。(マザーボード単体では2.5G/5G/10GのオンボードLANが実装されている製品があります。価格は結構お高めなのでハイエンドモデルでしょうか。)
最低でも有線LANポートが2.5Gに対応していれば、光回線のONUやHGWの10GポートとLANケーブルで直接接続することで2.5Gでリンクさせることができます。普段使いのメインPCを2.5G対応にし、その他の通信機器はONUやHGWの1Gポートに接続するのが現実的な運用になるかと思います。
またNASの上位モデルには2.5G対応製品があるようですので、それらも2.5Gで接続するためには2.5G対応スイッチングHUBが必要になってきます。
主なマルチギガビット対応製品
そんな「IEEE 802.3bz」マルチギガビット対応製品について、管理人「どらあい」が独断でピックアップした個人向けの主なものをご紹介します。
スイッチングHUB
Buffalo「LXW-10G2/2G4」
10Gポートを2ポート装備しているスイッチとしてはかなりの高コスパ。HGWの10Gポートに接続してマルチギガビット環境を容易に構築可能。設置には排熱に注意する必要がある。
- 10Gポートx2
- 2.5Gポートx4
- 金属筐体
- ACアダプター
- ファンレス
- マグネット付属
Buffalo「LXW-2G5」
2.5G環境の構築においてはほぼスタンダードな存在。10Gポートがないので価格が抑えられている。壁掛け対応でマグネットも付属するので設置場所を選ばない仕様が嬉しい。
- 2.5Gポートx5
- 金属筐体
- ACアダプター
- ファンレス
- マグネット付属
Planex「FX2G-05EM」
こちらもマルチギガビット環境構築にはうってつけ。LANポートとアクセスランプ、電源コネクタが前面にあるので天井裏など隠ぺい設置時に確認しやすい。実売価格が1万円を切ってきている数少ないモデル。
- 2.5Gポートx5
- 金属筐体
- ACアダプター
- ファンレス
tp-link「TL-SG105-M2」
筐体がやや大きめだが薄型設計。縦置きで壁掛けにすることで排熱スリットを上下に設定でき、より効率的に排熱させることが可能。
- 2.5Gポートx5
- 金属筐体
- ACアダプター
- ファンレス
- 壁掛け対応
tp-link「TL-SG108-M2」
8ポートマルチギガスイッチとしては最安値。LANポートそれぞれにアクセスランプがあり各ポートの状況がわかりやすい。
- 2.5Gポートx8
- 金属筐体
- ACアダプター
- ファンレス
- 壁掛け対応
アイオーデータ「ETQG-ESH08」
LANポート、アクセスランプ、電源コネクタなどを同一面に配置し操作・確認しやすい。アクセスランプの色の違いでリンク速度を確認することができる。
- 2.5Gポートx8
- 金属筐体
- ACアダプター
- ファンレス
- 壁掛け対応
LANアダプタ
Planex「GPE-2500T」
2.5GコントローラにRealtek RTL8125Bを採用し省電力化。消費電力が少ないことで発熱も抑えられ、高負荷時も安定した動作を実現している。
- 2.5Gポート対応
- PCI-E x1
- RJ-45ポート
- ロープロ対応
Planex「USB-LAN2500R」
USB3.0ポートがあれば変換アダプタ等なしで2.5G通信が可能。広く様々なデバイスに対応する。コンパクトな設計に加えUSBバスパワー駆動を実現。
- 2.5Gポート対応
- USB3.2 Gen1(USB3.0)
Planex「USBC-LAN2500R」
USB-Cポート搭載PCやLANポートが無いタブレット等に接続することで安定した高速2.5G通信が可能。本体のアクセスランプでリンク速度を確認することができる。
- 2.5Gポート対応
- USB-C
3.1 Gen1(USB3.0)
Planex「USBC-LAN5000R」
USB-Cポートに接続することで最大5Gでの通信に対応し、従来の有線1GやWi-Fiに比べ飛躍的な高速通信を実現。
- 5Gポート対応
- USB-C
3.1 Gen1(USB3.0)
NAS(ネットワークHDD)
アイ・オー・データ「HDL2-AAX」シリーズ
個人向け2ドライブモデル。設定次第でデータを保存したまま容量拡張が可能。旧NASからのデータ移行が簡単にできる「データコピー機能」搭載。2TB~16TBモデルラインナップ
アイ・オー・データ「HDL-AAX」シリーズ
個人向け1ドライブモデル。NASの基本機能に加えて必要な機能を追加できる「パッケージ機能」搭載。メディアサーバー機能「DTCP-IP」機能はオプション。1TB~8TBモデルラインナップ
バッファロー「LS720D」シリーズ
個人向け2ドライブモデル。DTCP-IP機能標準搭載で、さらに「nasne(ナスネ)」で録画した番組を自動で本機にダビングできる。2TB~16TBモデルラインナップ。
個人向け1ドライブモデル。内蔵HDDが横置き設計なので、奥行きはあるが高さが抑えられ安定感がある。外出先からもアクセス可能な「WebAccess」機能搭載。1TB~8TBモデルラインナップ。
有線LANは2.5Gが標準になってくる可能性
「IEEE 802.3bz」の最大のメリットはLANケーブルの入れ替えが不要という点。既に配線されているCat5eやCat6ケーブルで2.5Gや5Gのリンクスピードが出るのは導入のハードルがかなり低いと言えます。対応製品の価格がさらに下がってくるとよりメリットが大きくなってきますが、この辺は今後に期待といったところでしょうか。
ただ、やはりLANの通信スピードが上がったとしても、肝心のPCが高速で通信できるスペックを持たないと宝の持ち腐れになりそう。LANの経路が整っちゃうとPC本体も何とかしたくなっちゃって、諭吉さん何人もいなくなりそうです・・・。